『古典中の古典』
聖トマスといえばスコラ哲学の最高峰であり、とくに哲学や神学に
通じていない者にとって彼の著作を読むことは至難のわざである。
これまでは思想史の解説だけ読んで済ませてしまわざるをえなかった。
けれども本書は、トマスが政治的アドヴァイザーとしてキプロス王の
ために執筆したもので、非常に平明であり、容易に中世的な法・政治
思想の雰囲気に浸ることができる。ただし本書の性質上、厳密な議論
をするためには『神学大全』を紐解く必要がある。また、アリストテ
レス『政治学』の入門として読むこともできる。
なお、本書の半分以上を訳者解説が占めているが、専門家ならではの
充実した内容であり、挙げられている多数の文献も大変参考になる。