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戦後日本の防衛政策―「吉田路線」をめぐる政治・外交・軍事

『特筆すべき分析手法』
 本書は、連合国による占領期から高度成長期に至る間の日本の安全保障政策について時系列的に解説している。著者は、占領期における吉田茂首相による軽武装、経済復興重視、安全保障の対米依存を「吉田路線」と呼び、その後の歴代政権も曲折がありつつも、これを踏襲していった経緯を克明に著している。分析にあったって著者は、膨大な量の日米双方の公文書を活用して事実関係を丹念に積み上げた分析手法は、特筆に値する。
 第1部では、日本の戦後の政軍関係、特に日本特有の「文官優位」の発生経緯、国防会議を巡る旧軍関係者と旧内務官僚の暗闘、初期における防衛力整備についての諸問題を扱っている。
本部では、創設期の警察予備隊本部、保安庁、防衛庁の創設時が故の模索、曲折が解りやすく説明されている。第2部においては、「吉田路線」の設定のその後の政権に引き継がれていった経緯を、芦田、鳩山、岸各政権毎に述べている。ここで興味深いのは、吉田茂と政策的には対立していた後継総理も結果的には「吉田路線」を踏襲していった経緯である。また、案戦保障条約改定を巡り米国との間で同盟への貢献を巡るアプローチとして「軍事的貢献モデル」と「経済成長モデル」という2つのアプローチについて分析している。更に、第1次、第2次防衛力整備計画について米国の意向も紹介しつつ、防衛力整備にあたり「陸上優先」か「「航空優先」かを巡る国内政治的葛藤について克明に分析している。また、池田政権以降の経済成長が日本の国際的地位を向上させ、そのことが米国との安全保障交渉にも好影響を及ぼしたこと、しかしその一方で、米国がベトナム戦争で疲弊する一方で日本が経済大国として米国のライバルとなって国際的地位を向上させていったことが米国の警戒感をもたらした。しかし、それは、日本の国際的地位の向上に伴うナショナリズムの向上や反核感情の高揚であり、米国の「同盟国日本」に対する姿勢に及ぼした「吉田路線」の影響の大きさを結論として強調している。
 著者は、第1部において戦後日本の政軍関係の形成における旧内務官僚の存在感、政策決定における影響力について述べているが、そうした日本の独特の特性が、第2部に述べられている高度成長期の防衛政策に如何に影響したかについては、やや説明に乏しい印象を受ける。第8章の防衛力整備に関する記述にはみられるが、対米交渉、安全保障条約改定過程についても分析が更に詳細に成されていれば、第2部は更に複眼的な分析が可能だったと考える。また、佐藤政権まで本研究の射程を持ちながら、第3次防衛力整備計画や核問題とリンクした形での
沖縄返還問題について記述がないのは少々違和感を感じた。
 しかし、全体としては戦後の我が国の安全保障政策を大観し、その特色を理解する上で良書であり、著者が強調する「吉田路線」の影響が如何に大きかったを容易に理解できる。
 今日の多様な脅威に時代にあって、日本は、国力応分の日米同盟への寄与と国際貢献を求められる立場にある。軽武装、経済復興重視、安全保障の対米依存という「吉田路線」継続はもはや困難な国際世論の中で、今一度我が国の安全保障政策の原点を振りかえる上で価値ある書籍であると考える。

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