『既得権者たちへの痛烈な批判』
原題は、"Saving Capitalism from Capitalist"。自由主義的資本主義者気取りの、既得権でべたついたやかましい金持ちたちが、資本主義の最良の部分 - 資源を最適に分配する市場機能 - を損ねている、という話。
特にアメリカの鉄鋼業界の話が印象に残った。アジアの鉄鋼メーカーの輸入攻勢に困った鉄鋼業界の団体(いわゆる既得権者)は、活発なロビイングを行なった。これを受け、2002年に鐵鋼輸入に関する8%から20%の関税を課す法律をブッシュ大統領が裁可した。本書によれば、この措置は450億ドルの費用負担をアメリカ国民に負わせることになった。このお金で 9000人の鉄鋼業界の雇用が確保されたらしいが、大部分のお金はもちろん鉄鋼業界のお偉いさんの財布に入ったはずである。また、もし別のところに遣えば 7万4000人の雇用を創出できたとも言われる。
端的に言うと、本書の主張は、世の中声が大きくて、たまたま声が通るところにいる人が得するようになっている、ということである。James Brown は、Say It Loud とでかい声で歌ったが、残念ながら彼はあまり声の通るところにいなかった。ということで、昨今、いかに声を大きくして声を通るようにするか、というハウツー本でいっぱいだが、本書はそういう世相に対する非常に心地よい反論である。